FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウス


本研究成果は科学雑誌「Cell Structure and Function」に掲載されました(こちら)。



最近、Aキナーゼ (Protein kinase A) やERK (Extracellular signal regulated kinase) といったリン酸化酵素の活性を検出するFRETバイオセンサーを発現するマウス(PKAchuとEisuke)を作製しました。これらのマウスを吸入麻酔下に観察することで、AキナーゼやERKの活性を生きた細胞で観察することができるようになりました。このマウスを二光子顕微鏡で観察することにより、生きたマウスを使って薬物動態解析ができるようになりました。ここでは腸管の筋層と筋間神経叢でAキナーゼ活性を観察した結果を示します。テオフィリン(cAMPの代謝酵素阻害薬)あるいはアクトシン(cAMPのアナログ)をマウスに投与すると、AキナーゼがcAMPによって活性化を受け、それに伴い腸管蠕動が減弱するのが観察できます(MPEG ビデオ) テオフィリン投与では、血管内皮細胞・神経・平滑筋でAキナーゼが軽度に活性化され蠕動抑制も一過的ですが、アクトシンでは平滑筋・神経の両方で活性が大きく上昇して、蠕動抑制効果も顕著であることがわかります。このように生体で細胞間での酵素活性の相違という詳細な情報を得ながら副作用をみることが可能となりました。
  また、このようなマウスは発生過程における情報伝達分子の活性を網羅的に観察するのにも使えます。
これらのトランスジェニックマウスは個体レベルでの情報伝達研究の幕開けとなることが期待されています。


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