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研究目的
蛍光生体イメージングの技術で「誰も見たことがない現象を発見」し、システム生物学の手法を使って「さまざまな病態の理解」を目指します。
研究内容: 詳しい解説はPHOGEMON Projectをご覧ください。
キーワード:蛍光生体イメージング、システム生物学、細胞生物学、病理学、がん、炎症

概要分子生物学の勃興と隆盛は、細胞内情報伝達系を司るきわめて多くの分子を同定し、その流れは今も続いています。 その結果、きわめて詳細かつ複雑な情報伝達系のマップが作成されるに至りました。 しかし、このマップは多くの場合、分子という点と分子間相互作用という線で結ばれたものであり、量的質的情報や時空間情報を欠落しています。 多くの研究者の努力により蓄積されたこのマップに生命の息吹を吹き込むためには、量的質的情報や時空間情報をパラメータとして与えた計測データに基づく数理モデルを構築する必要があります。 同様のことは個体や組織レベルの研究でもいえるでしょう。遺伝学的手法により多くの重要な疾患関連遺伝子が同定され、その分子生物学的性質は明らかにされてきました。 しかし、組織レベルではこれらの分子の活性がどのように変化しているのかはほとんど明らかにされていません。 わたしたちは、分子活性を生きた細胞で測定できる蛍光タンパク質の基づくバイオセンサーを多数作成し、さらにそられらのバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスを作製して、 生きた個体で分子活性をリアルタイムに観察する系を世界に先駆けて樹立しました。 この私たちだけが持っている技術で、誰も見たことがない現象の発見とその理解を目指しています。

私たちの研究戦略 : 私たちの研究室は、がん遺伝子の研究から開始し、1990年代にはCrkがん遺伝子情報伝達系に関連するいくつかの分子を発見しました。 C3G (Crk SH3-binding guanine nucleotide exchange factor)、DOCK180 (Downstream of Crk, 180 kDA protein)に代表される低分子量Gタンパク質活性化因子が代表的なものです。 その後、2001年に世界初のがん遺伝子の活性を可視化する蛍光バイオセンサーRaichuを開発し、以降、数十種類の蛍光バイオセンサーを作りました。 そして、バイオセンサーの高感度化と細胞や個体での安定した発現をさせることに成功し、2012年にはトランスジェニックマウスの開発にも成功しています。 これらのバイオセンサーとトランスジェニックマウスが研究室の技術的核心部となっています。

  • 細胞の心を読む: 細胞も人間と同じように、喜怒哀楽の状態をもっています。 我々は蛍光バイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスを二光子励起顕微鏡を使って生きたまま観察することにより、 細胞の「心」”を読み、細胞がどうして活性化されるのか、その以上がなぜ病気を引き起こすのかを明らかにします。
  • 細胞を操作する: 観察結果から必ず「それはきっとこういうことだ」という仮説が出てきます。 それを証明するには外から細胞を操作して期待する結果が得られることを示さないといけません。この目的のために、生きた組織で細胞を操作するためのツールを開発しています。
  • 生きた組織で病気を観察する: 蛍光バイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスを二光子顕微鏡で観察すると、様々な病気のときに、さまざまな細胞が驚くような表情を見せます。 新しい眼鏡で、先人が見たこともないことを見つけよう、という探索プロジェクトです。たとえば皮膚組織で細胞増殖刺激が花火状に伝搬する現象を見出してSPREADと命名しました。

ムービーでみる研究内容
    生きた組織で情報伝達分子の活性を見る Only One in the World
論文概要
  1. 2023  上皮細胞増殖因子受容体の重畳性
  2. 細胞の集まりからリーダーが生まれる仕組み
  3. NK細胞による肺転移の防御
  4. がん細胞が免疫から逃れるメカニズムの解明
  5. うずまき管の伸長を司る分子活性と細胞群の波を発見
  6. 血管攣縮を制御する時間・空間的な機構を解明
  7. 細胞集団による波パターン形成の新理論を発表
  8. 二光子励起により高効率で活性化可能な光活性化アデニル酸シクラーゼの開発
  9. 網膜が持つ未知の光応答を新しい顕微鏡観察法で発見
  10. 生体内での近赤外蛍光タンパク質の高輝度化に成功
  11. 集団運動における機械的な力を介した細胞間情報伝達機構を解明
  12. 長波長蛍光タンパク質を用いたFRETバイオセンサー (Booster)の開発
  13. 蛍光共鳴エネルギー移動に基づく二光子励起光遺伝学操作法の開発
  14. 胸腺細胞の運動動態を制御する仕組みの一端を解明
  15. 膀胱上皮の創傷治癒過程
  16. 生体内で細胞の増殖を制御する仕組みの一端を解明
  17. 蛍光と発光のハイブリット型バイオセンサー
  18. 生きたマウスで組織・細胞形態を可視化
  19. 生きたマウス体内のAMPK活性を可視化
  20. TAK1活性を検出する新規FRETバイオセンサーの開発
  21. 生きたマウスの腫瘍血管内皮細胞におけるシグナル分子活性の可視化に成功
  22. 細胞増殖シグナルは、花火のように伝搬する
  23. EGFRシグナル伝達系の定量的シミュレーションモデル
  24. 白血球が炎症組織へ集簇する過程のライブイメージング
  25. 乳がん組織でのERK活性不均一性の意義
  26. Rac1活性の"揺らぎ"が引き起こすグリオーマ細胞の遺伝子発現の多様性
  27. ERK分子の活性化の頻度による細胞の増殖速度の調節機構
  28. 腸管神経細胞における情報伝達分子の意義の解明
  29. FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウス
  30. 脳内を浸潤する神経膠腫の観察
  31. 癌遺伝子情報伝達経路の実測データに基づくシミュレーションモデルの構築
  32. 細胞増殖刺激の時空間的な伝播経路の解析
  33. 細胞運動時と細胞骨格を制御する低分子量G蛋白:Rac, Cdc42
  34. 細胞質分裂時に細胞骨格を制御するG蛋白:RhoA
  35. 神経細胞突起伸展におけるG蛋白の役割
  36. エキソサイトーシス過程でのTC10タンパク質の活性化イメージング
  37. 貪食作用のキー分子の働きを可視化する。

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