脳内を浸潤する神経膠腫の観察






 Rhoファミリー低分子量G蛋白質は、培養細胞での2次元平面における細胞運動の研究から、細胞運動や浸潤、転移に関与することが示唆されていしたが、その活性変化を生体内で実際に見ている例はありませんでした。そこで、Rhoファミリー低分子量G蛋白質のFRETバイオセンサーを発現するラット神経膠腫細胞株を樹立し、同系のラット脳に打ち込んだ後、浸潤過程を2光子顕微鏡で観察しました。血管をあらかじめ蛍光色素で標識すると、浸潤方式には2つあることがわかりました。血管に沿って走行する細胞群と、そこから逸脱して脳実質に向かって浸潤する細胞群です。
前者はRhoAの活性が高く、後者はRac1とCdc42の活性が高いことが観察されました。Rac1/Cdc42が浸潤する細胞で高い現象は均一なゲル内でも観察されることから、Rac1/Cdc42の活性が高い細胞が他の細胞群を率いて脳内に浸潤していることが示唆されました。この活性制御を担う分子を探索した結果、Zizimin1/DOCK9が神経膠腫の浸潤に重要であることが証明されました。 本研究成果は科学雑誌「Journal of Cell Science」に掲載されました(こちら)。


戻る