平成17年度 がん特定領域研究 若手共同研究報告書

 

研究課題名: 骨軟部腫瘍のゲノム異常の網羅的解析

 

若手研究代表者(申請者)        :南谷 泰仁

所属研究機関                  :東京大学医学部附属病院血液腫瘍内科

共同研究者                                    金 光

所属研究機関                  癌研究所発がん研究部

 

 

研究成果概要

 

我々は、Affymetrixのマイクロアレイを使用して624kbの平均解像度でゲノムのコピー数と同時にアレル不均衡を調べることを可能とするCNAGシステムを開発した。今回、我々はこのシステムを利用して、特徴的な遺伝子変異、染色体異常が知られていない若年性骨肉腫を対照として、ゲノム異常の網羅的解析を試みた。 

現在までに癌研有明病院整形外科症例から若年性骨肉腫18例について、解析が終了している。腫瘍ゲノムを抽出し、AffymetrixGeneChip100K SNPs arrayにてデータを取り、CNAGソフトウエアでゲノムコピー数、アレル不均衡の解析を行った。コピー数の変化の集積図を図1に示す。染色体1番、5番長腕、6番短腕、8番長腕、14番に高度に増幅の集積している箇所を認め、12番には高度増幅を複数の検体で認めた箇所が複数存在した。また、染色体2番長腕、5番長腕、10番、13番には、欠失が集積している箇所が見られた。現在、コピー数の異常が集積している箇所を、FISH, PCRなどで確認を行い、腫瘍の発生、進展に関与していると思われる遺伝子の特定をするための作業を行っている。更に、データに特殊な処理を行うことによって、自己正常対照を用いることなくアレル別の解析を行う手法を開発し、これによって高感度にアレル不均衡を検出することを可能とした。これによって、図2に示されるように、アレル不均衡の集積を染色体3,5,10,13番に認めた。このデータに基づき、アレル不均衡の最少共通領域を複数同定し、標的候補と考えられる遺伝子の変異解析、発現解析を予定している。

図1

若年性骨肉腫18症例のゲノム増幅・欠失の集積図。染色体上部に増幅を赤で、下部に欠失を緑で示している。高度増幅、ホモ欠失の箇所は、それぞれ明るい色で表している。

 

図2

若年性骨肉腫18症例のアレル不均衡の集積図。アレル不均衡を認めた箇所を染色体上に赤で示している。