細胞運動時のRacとCdc42の活性化 (文献18)

Rasは低分子量Gタンパク質の代名詞とも言うべき代表選手であるが、このRasとはやや遠い親戚のGタンパク質群として、Rhoファミリーの分子が知られている。これらの分子、Rho、Rac、Cdc42は、細胞骨格系を制御することが明らかになっている。しかし、では、細胞が変形するときに、いったいどこでこれらGタンパク質は活性化されているのであろうか?この問題にチャレンジするために、HT1080細胞という激しく運動する線維芽細胞にプローブを発現させて、RacおよびCdc42が細胞のどこで活性化されるかを観察した。その結果、細胞の進行方向に向かってなだらかなグラジエントをもってRacの活性は上昇するのに対し、Cdc42は、より先端部で強く活性化されていることがわかった。それがどういう意味を持つのかは現時点ではまだまったくわからない。このように新しいプローブを使って観察っすると、これまで考えることもできなかった新しい疑問が次々にわいてくるから楽しい。もっとも、分子生物学者はメカニズムに言及しない研究は“descriptive”といって一蹴することが多いので苦労する。でも、生物学の基本はdescriptionだろう?

Racの運動時の画像 左:微分干渉像、右:FRET By Reina Itoh.

Cdc42の運動時の画像 左:微分干渉像、右:FRET By Reina Itoh.