Raichu-RalA, RalA indicator

参考文献
Takaya A, Ohba Y, Kurokawa K, and Matsuda M. RalA activation at nascent lamellipodia of epidermal growth factor-stimulated Cos7 cells and migrating Madin-Darby canine kidney cells. Mol Biol Cell. 2004 Jun;15(6):2549-57.

Raichu-Rasを用いることで、Rasの時空間情報を得ることができるようになった。それでは、次に考えられることは、Rasの下流のシグナルまで、その時空間的な情報が維持されているかということである。Rasの標的分子には色々あるが、その中で今回注目したものはRalGEFである。これは同じRasファミリーに属する低分子量Gタンパク質であるRalの活性化因子であり、最近RalGEFからRalの情報伝達経路が、特にヒトの細胞の癌化に大きく寄与していることも報告されている。このことからも、癌化のシグナルを理解する点でもRalのシグナルを理解することが重要だと考えられるのだが、Ralに関しては、小胞輸送に関係していることは分かっているのだが、それほど詳しい研究が行われていないのが実情である。そこで、癌化のシグナルを考える上で、Rasの下流のシグナル伝達がどのように時空間的な制御を受けるのか、また、Ral自体の活性制御がどのようになっているのか考えるのは重要なことであろう。そこで、本研究では、Ralの活性化をモニターするプローブを作製し、主に上皮細胞増殖因子(EGF)におけるRalの活性化について、解析を行った。

1.Raichu-RalAの構造

COS7細胞にプローブを発現させ、EGFで刺激してやると、形成されたラメリポディアの部分でのみ、Ralの活性化が確認された。

ムービー(MPEG file : 561 kb)


EGF刺激時のRas活性化の空間的分布は、確かにラメリポディア部位で強いが、細胞膜全体である。RalはRasにより、制御される下流分子であるが、活性化の位置が完全に一致しないこと、またRalGEF自体はRas活性化の位置と挙動を共にする事を考えると、Ralの活性化の位置はRas以外の活性化因子の存在によるか、あるいは不活性化因子により行われることが示唆される。そして、このRalの結果を見ると、上流因子の活性化の場所が分かったからといって、下流因子の活性化の場が必ずしも同じところになるとは限らないということがわかる。

Raichuプローブに関して → PHOGEMONマニュアル



戻る