“ 私の研究室から何人が教授になったかは知らないが、教授になるだけの力を持った研究者は大勢いた。” — — 長嶋和郎 |
教育・研究機関のPIあるいは会社のオーナーとして活躍中のOB/OGたちの研究室在籍時の研究成果を通して当研究室の歴史を紹介します。開設年降順です。 |
北野正寛 Ikasu Brewing |
北野正寛氏は、大学院生としてRab5のFRETバイオセンサーを開発し、貪食細胞を消化する過程でRab5活性がファゴソーム上で点滅する現象を発見し、そのメカニズムを明らかにしました。渡米してポスドクを経て、麦酒醸造会社を起業しました。
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小長谷有美 理化学研究所 BDR 定量的細胞運命決定研究チーム |
小長谷有美氏は、大学院生としてAMPKのFRETバイオセンサーを開発し、それを発現するトランスジェニックマウスを作成し、マウス遅筋と速筋でのAMPK活性化動態の違いを明らかにしました。米国留学後、理研のチームリーダーとして帰国しました。
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寺井健太 徳島大学医学部顕微解剖学分野 |
寺井健太氏は、大学院生としてRafのFRETバイオセンサーを開発した後、米国留学、東京大学分子生物学研究所助教を経て、本学准教授に着任。バイオセンサー開発およびライブイメージング研究で多くの大学院生・医学部生を指導しました。
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平島剛志 メカノバイオロジー研究所 国立シンガポール大学 |
平島剛志氏は、メカノバイオロジーチームのグループリーダーとして、多くの学生を指導しました。細胞運動と組織・器官形態形成を力と細胞内情報伝達の両面から、数理モデリングとイメージングを駆使して研究を進めました。生命動態システム科学プロジェクトの設立メンバーの一人です。
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西原広史 慶應義塾大学医学部・腫瘍センター |
西原広史氏は、DOCKファミリーの二番目の分子、DOCK2がRac1活性化因子であることを証明しました。
この分子は、その後、九大の福井教授らのグループにより、血球系細胞の運動に重要な役割を果たすことが示されています。
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今城正道 北海道大学創成研究機構化学反応創成研究拠点 |
今城正道氏は、腸管グループのリーダーとして、多くの大学院生の研究指導を行いました。特にERKマップキナーゼの活性が腸管腫瘍の発生に
どのように関与するかについて研究を進めました。
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Aryé Elfenbein Wild Type |
Aryé Elfenbein氏は、Dartmouth Medical SchoolのMD PhD studentとして京都大学で研究を行いました。Marc Simons研究室との共同研究として、Syndecan 4によるFGFR受容体活性化機構
や、RhoファミリーGタンパク質のイメージングを行いました。インターンとポスドクを終えた後、Wild Type社を起業しました。
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平田英周 金沢大学がん進展制御研究所 腫瘍細胞生物学研究分野 |
平田英周氏は、脳腫瘍のintravital imagingを行い、腫瘍の辺縁部で低分子量Gタンパク質の活性が高く浸潤能が亢進していることを示しました。
その後、UK Cancer Instituteに留学し、ERKのFRETバイオセンサーを使って、抗がん剤耐性機構が周囲の組織との相互作用により誘導されることを示しています。
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青木一洋 国立基礎生物学研究所 岡崎統合バイオサイエンスセンター |
青木一洋氏は大学院生時代は神経細胞におけるFRETイメージング、教員となってからはがん遺伝子情報伝達系のシステムバイオロジーを進めました。研究室の看板の一つであるイメージングに基づく定量生物学とシステム生物学の中心メンバーとして活躍しました。留学はしていませんが、国内外に共同研究者があり国際的活躍をしています。
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大場雄介 北海道大学大学院医学研究院 細胞生理学教室 |
大場雄介氏はC3Gのノックアウトマウスを作成し、この分子の欠損が胎生致死を誘導すること、およびこの分子が細胞接着に必要であることを明らかにしました。また、Raichuバイオセンサーを使った解析から、RasとRap1がどのように時空間的に解析されているかをシミュレーションモデルを作って解析しました。
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清川悦子 金沢医科大学 病理学T |
清川悦子氏はDOCK180がどのようにして葉状突起を誘導するかを明らかにすべく、低分子量Rac1タンパク質とDOCK180の関連を解析しました。その過程でDOCK180がRac1の優勢劣性変異体に特異的に結合することを発見しました。低分子量Gタンパク質の優勢劣性変異体は活性化因子にトラップされることが知られていたことから、DOCK180がRac1の新規活性化因子であると報告しました。
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中村岳史 東京理科大学 生命科学研究所 |
中村岳史氏は大学院生を指導して、神経細胞におけるFRETバイオセンサーイメージング技術を確立しました。また、Rab5に対するバイオセンサーを作成し、アポトーシス細胞が貪食される際にRab5が活性化されるメカニズムを明らかにしました。
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長谷川秀樹 国立感染症研究所 インフルエンザ研究センター |
長谷川秀樹氏は180 kDaのCrk結合タンパク質の同定に挑戦しました。この当時5 kbを超える長さのcDNAを単離することは難易度の高い技術で、5'末端のcDNA配列を決定するのに多くの時間を費やしました。阪大の野島教授が作成されたcDNAライブラリを使ってようやく成功し、このタンパク質をDOCK180と命名しました。DOCK180を細胞膜に発現させると葉状突起を誘導するので、低分子量Gタンパク質Rac1と協調することまではわかりましたが、既知のタンパク質との相同性はほとんどなく、その生化学的機能解析は次の研究を待つことになりました。
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田中伸哉 北海道大学大学院医学研究科 腫瘍病理学分野 |
1990年代はタンパク質間相互作用を指標に情報伝達研究が発展した時代です。田中伸哉氏はFar Western法を開発し、Crkがん遺伝子産物に分子量130 kDaと180 kDaの分子が結合することを発見しました。さらにこの方法をファージ発現ライブラリーを用いたスクリーニングを展開して130 kDa分子のcDNAを単離し、そのコードするタンパク質が新規のRasファミリーGタンパク質活性因子であることを発見し、この分子をC3Gと命名しました。のちに、服部成介博士らの研究室でこの分子がRasファミリー分子の一つRap1の活性化因子であることが明らかにされました。このことから、遺伝子命名委員会によりC3GはRap1GEFと再命名されていますが、こちらの名前はまだ一般的ではありません。
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望月直樹 国立循環器病研究センター研究所 所長 |
望月直樹氏は三量体型Gタンパク質の制御機構を研究する過程でGiファミリータンパク質が、Rap1不活性化因子Rap1GAPのスプライシングバリアントに結合することを発見し、この分子をRap1GAPIIと命名しました。また、これらRasファミリー低分子量Gタンパク質の活性を生細胞で観察するために、FRETに基づくバイオセンサーRaichuを開発しました。
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