細胞分裂時のRhoファミリーGタンパク質の活性変化(文献20

細胞がもっとも激しく形態変化を起こす時といえば、やはり細胞分裂時であろう。RhoファミリーGタンパク質はこの細胞分裂にも重要な働きをすることが多くの研究より明らかになっているが、では分裂時にどこで作用しているのであろうか?この問題にRaichuプローブを用いて取り組んだ。下のビデオ画像は、HeLa細胞が分裂するときにRhoファミリーGタンパク質の活性はどのように変化するかを調べたものである。これまでの生化学的研究では、細胞周期を揃えるためにさまざまな薬剤の投与を必要とした。しかし、これらの薬剤は多くの場合、RhoファミリーGタンパク質の活性にさまざまは影響を与えることが知られている。そこで、この研究では、気長に細胞の写真をとり続け、細胞が分裂するまで撮影し続けるという手法をとった。このような手法 は生化学的には用いることができないもので、イメージングによるシグナル伝達研究の大いなるメリットのひとつだ。さて、その結果は、@Rho、Rac、Cdc42、いずれも、細胞分裂の開始とともに活性が速やかに低下する。これは、細胞の形態を支えているアクチン線維がばらばらになって細胞が丸くなるのに呼応しているように見える。A やがて染色体分離が終了し細胞質分裂が開始すると、Rhoの活性が分裂溝を始めとする辺縁部の細胞膜で上昇を開始し、それは分裂が終了して細胞が広がるまで続く。B 一方、Racの活性は細胞質分裂が始まっても低下を続け、細胞質が完全に分離し、細胞が伸展を開始するとともに活性が上昇し始める。Cdc42の活性はおおむねRacと同じような傾向をとるが、その活性変化はかなり少ない。これらの結果は、アクトミオシン線維の収縮をRhoが促進し、Racが抑制するという現在のモデルにはよく合致する観察結果となった。しかし、細胞分裂開始時のRhoファミリーの活性低下はこれまで観察されておらず、今後、その意義について解析する予定である。

RhoAの運動時の画像 左:微分干渉像、右:FRET   By Hisayoshi Yoshizaki.

Rac1の運動時の画像 左:微分干渉像、右:FRET  By Hisayoshi Yoshizaki.

Cdc42の運動時の画像 左:微分干渉像、右:FRET  By Hisayoshi Yoshizaki.